検査済証がなければ適合証明できないのか

【最新情報!】
令和4年度税制改正が国会にて成立すれば、『登記簿上の建築日付が昭和57年1月1日以降の家屋』については、『住宅の取得等をして令和4年1月1日以後に居住の用に供した場合』の住宅ローン控除等は、耐震基準適合証明書がなくとも適用となります。検査済証がなくても住宅ローン控除を受けられる物件が増加になる見込みとなりました。

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このページの記事は、検査済証が残っていない場合に完了検査合格を確認する代替手段についての解説です。

完了検査に合格していない物件におけるフラット35の利用については下記リンクへ。

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なぜ完了検査の実施を確認するのか?

住宅減税およびフラット融資の対象は新耐震基準の物件

住宅ローン控除等の住宅取得減税やフラット35融資の適合証明においては、対象物件が新耐震設計基準で建てられたものかどうかの確認をする必要があります。

新耐震設計基準とは、それまでは震度5の地震に対する設計計算を行っていたものを、震度7の大地震に対する設計計算も行うようにしたもので、建築基準法施行令にて定められています。

新耐震と旧耐震の違いを示した表

新耐震で設計されたのかは建築確認日で分かる

新耐震設計基準の施行は、昭和56年6月1日です。設計された時期は、建築確認日をもって判断します。すなわち、建築確認日が昭和56年6月1日以後の中古住宅が、新耐震設計基準に適合した物件と判定されます。

建築確認日は、確認済証に記載されています。確認済証は行政機関等が建築確認を行った旨の証明書です。平成11年4月30日以前の確認済証は、確認通知書という名称となっています。

新耐震で施工されたのかは完了検査実施で分かる

確認済証は設計時点で交付されるため、物件が新耐震設計基準で施工されたものかどうかは分かりません。

物件が新耐震設計基準で施工されたものかどうかは、行政機関等が完了検査を実施したかどうかで確認します。

完了検査とは、建物が竣功した時に行政機関等が建築基準法に基づき、建物が建築確認のとおりに建設されているかを検査するものです。

完了検査はすべての物件で実施されている訳ではない

建築基準法では完了検査が義務づけられていますが、実際にはすべての物件で完了検査が実施されている訳ではありません。

2000年以前においては、完了検査の実施率は30%程度となっていました。

完了検査の実施率の推移を示したグラフ

参考文献:建築基準法に基づく完了検査実施率の向上に関する研究 増渕 昌利 高田 光雄 日本建築学会計画系論文集76 巻 (2011) 660号

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検査済証があれば新耐震基準の物件かがすぐに分かる

検査済証は完了検査を行った旨の証明書です。検査済証には建築確認日も記載されています

検査済証があれば、新耐震設計基準で建てられた物件かどうかが直ちに判断できます。

検査済証がない時に完了検査実施を確認するには?

検査済証は大切に保管すべきものとされていますが、薄い紙片のため紛失や所在不明となりやすく、特に建売住宅を購入した場合は所有者が建築確認に関与していないので、検査済証を受け取ったかどうかすら定かでないことが珍しくありません。

検査済証がない時に完了検査実施の有無を確認する方法として、
・建築計画概要書等を閲覧して確認する方法
・建築確認台帳記載事項証明書で確認する方法
があります。

建築計画概要書等を閲覧して確認する方法

建築計画概要書とは?

建築計画概要書は、建築基準法に基づいて行政機関に保管されている書類で、建築確認申請された建築計画の概略と建築確認番号と確認日が記載されています。

建築計画概要書の閲覧は、所有者に限られず誰でもすることが出来ます。「建築計画概要書等の閲覧」制度は昭和46年に創設され、それ以降のものが閲覧可能です。

制度上は閲覧のみとなっていますが、行政機関によってはコピーが可能なところがあります。

建築計画概要書には、完了検査に関することは記載されていません。完了検査実施の有無については、「建築基準法令による処分等の概要書」が必要となります。

建築基準法令による処分等の概要書とは?

「建築基準法令による処分等の概要書」は、建築確認に加えて中間検査、完了検査、検査済証交付の記録も記載されたもので、完了検査の実施の有無を確認することが出来ます。

「建築基準法令による処分等の概要書」は「建築計画概要書」とセットになって行政機関に保管されています。

「建築基準法令による処分等の概要書」は、平成11年の「建築計画概要書等の閲覧」制度改正以降のものが閲覧できます。ただし、所管行政機関により異なる場合があります。

建築計画概要書等の閲覧方法

建築計画概要書等は、特定行政庁と呼ばれる地方公共団体が所管しており、当該建築物の立地する市区町村が特定行政庁でないときは、都道府県が特定行政庁になります。特定行政庁の一覧は、下記のリンクをご覧ください。

参考HP:全国建築審査会協議会 特定行政庁一覧

建築計画概要書等の閲覧場所は、特定行政庁になっている市区町村または都道府県ですが、都道府県の場合は土木事務所等の出先機関の場合もあります。物件が立地する地域を所管する特定行政庁に問い合わせを行って確認してください。

閲覧の申請時には、物件の特定に時間を要することがあり、また他の申請者がいる場合には長い待ち時間が発生することもあります。地番等の物件情報の十分な準備と時間の余裕が必要となります。

建築確認台帳記載事項証明書で確認する方法

建築確認台帳記載事項証明書とは

検査済証や確認済証(確認通知書)がなくなった場合、その再発行は受けられません。近年、金融機関が住宅ローンの条件として、融資対象物件が完了検査を受けていることを求めることが多くなり、検査済証の再発行のないことが、中古住宅の流通を妨げる要因の一つとなっています。

最近では、一部の地方公共団体において、検査済証を再発行する代わりに、当該建築物が建築確認台帳に記載されていることを証明する書面を交付する制度を設けるようになっています。

建築確認台帳には、建築物の構造や用途等に加えて、確認済証や検査済証の交付年月日が記載されており、これらの記載事項が証明されることによって、当該建築物が完了検査を受けていることを金融機関等が確認することが出来ます。

建築確認台帳記載事項証明書の特長

建築確認台帳の記載事項証明は、各地方公共団体の独自制度です。すべての市町村等に制度が存在する訳ではなく、また制度が存在する場合も、制度の内容に違いがあります。名称も「建築確認台帳」のほか、「建築物台帳」や「確認台帳」などのバリエーションがあります。

制度を創設できるのは、建築確認台帳がある地方公共団体に限られます。建築確認台帳は、建築計画概要書等と同じく、特定行政庁となる地方公共団体に備え置かれています。

当該市区町村が特定行政庁であっても、全ての物件の建築確認台帳があるとは限りません。物件の規模や構造等によっては、都道府県の所管になる場合があります。また特定行政庁となる以前に建築された物件についても、都道府県から引き継がれてない場合があります。さらに建築時期等の条件によっては、台帳そのものが存在しない場合もあります。

特定行政庁になっている地方公共団体に台帳記載事項証明の制度があったとしても、建築確認台帳に記載されたすべての物件に対して証明が受けられるとは限りません。民間の指定確認検査機関が建築確認等を行った物件については証明できない制度となっている場合もあります。

建築確認台帳の記載事項は、建築当時のままのものです。物件の所有者や地名等が現在のものと違っていることがあります。物件に関する情報が少ないために、物件の特定が出来ず、台帳に記載されているかどうかも分からないことが珍しくありません。

建築確認台帳記載事項証明書の取得方法

物件が立地する地域を所管する特定行政庁に問い合わせを行います。まず第一に、建築確認台帳の記載事項証明の制度があるかどうかを確認します。制度がある場合には、証明書交付の申請方法について確認します。申請方法として確認する内容は、申請権者、申請窓口、申請時間、発行手数料、申請書の書式、および事前に準備する情報等です。

申請権者は、物件の所有者本人とされていることが多く、その場合、代理人が申請するときは委任状を求められるのが一般的です。委任状の書式についても、問い合わせ時に確認が必要です。

申請書には、申請理由と証明書提出先の記入欄があるのが一般的です。申請理由は「中古住宅適合証明」、提出先は「適合証明機関」となりますが、より具体的な記入を求められることもあります。

申請時には、物件の特定に時間を要することがあり、また他の申請者がいる場合には長い待ち時間が発生することもあります。物件情報の十分な準備と時間の余裕が必要となります。

近畿ブロックの特定行政庁一覧

特定行政庁 担当部局 制度
滋賀県 土木交通部 建築課 建築指導室
大津市 都市計画部 建築指導課
草津市 都市計画部 建築課
彦根市 都市建設部 建築指導課
近江八幡市 都市産業部 建築課
守山市 都市経済部 建築課
長浜市 都市建設部 開発建築指導課
東近江市 都市整備部 建築指導課
京都府 建設交通部 建築指導課
京都市 都市計画局 建築指導部 建築審査課
宇治市 都市整備部 建築指導課
大阪府 住宅まちづくり部 建築指導室 建築企画課
大阪市 都市計画局 建築指導部 建築企画課
豊中市 都市計画推進部 建築審査課
堺市 建築都市局 開発調整部 建築安全課
東大阪市 建築部 建築審査課
吹田市 都市整備部 開発審査室
高槻市 都市創造部 審査指導課
枚方市 開発指導室 開発調整課
守口市 都市整備部 建築指導課
八尾市 建築都市部 審査指導課
寝屋川市 まち政策部 まちづくり指導課
茨木市 都市整備部 審査指導課
岸和田市 まちづくり推進部 建設指導課
門真市 まちづくり部 建築指導課
箕面市 みどりまちづくり部 建築指導室
和泉市 都市デザイン部 建築・開発指導室
池田市 都市建設部 審査課
羽曳野市 都市開発部 建築指導課 .
兵庫県 県土整備部 住宅建築局 建築指導課
神戸市 住宅都市局 建築調整課
尼崎市 都市整備局 都市計画部 建築指導課
西宮市 都市局 建築・開発指導部 建築調整課
姫路市 都市局 建築指導課
明石市 都市整備部 建築室 建築安全課
加古川市 都市計画部 建築指導課
伊丹市 都市活力部 建築指導課
川西市 都市整備部 まちづくり指導室 建築指導課
宝塚市 都市整備部 都市整備室 宅地建物審査課
三田市 都市整備部 都市政策局 審査指導課
芦屋市 都市建設部 建築指導課
高砂市 まちづくり部 まちづくり推進室 建築指導課
奈良県 県土マネジメント部 まちづくり推進局 建築課
奈良市 都市整備部 建築指導課
橿原市 まちづくり部 建築指導課
生駒市 都市整備部 建築課
和歌山県 県土整備部 都市住宅局 建築住宅課
和歌山市 都市計画部 建築指導課

制度欄の○印:各地方公共団体のHPにて台帳証明等の記載があったもの

 

フラット35融資の対象物件であるかどうかの判断を後回しにして売買契約を進めることは、買主および売主の双方にとって大きなリスクとなります。売買契約や売出しに先行して判断のための調査を行うことをお奨めします。

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