耐震基準適合証明書は何の役に立つのか

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令和4年度税制改正が国会にて成立すれば、『登記簿上の建築日付が昭和57年1月1日以降の家屋』については、『住宅の取得等をして令和4年1月1日以後に居住の用に供した場合』の住宅ローン控除等は、耐震基準適合証明書がなくとも適用となります。以下の記事の内容は、これにより変わる可能性があるのでご注意ください。

今回は、住宅税制についての話です。
耐震基準適合証明書は、税の優遇措置を受けるために使われるものです。
耐震基準適合証明書を使う住宅税制としては住宅ローン減税が有名ですが、これ以外にも耐震基準適合証明書を使う場合があります。
耐震基準適合証明書について書かれているのは、租税特別措置法等の税制法令ですが、これらはめぐるましく改正がなされていることもあり、極めて難解な法令です。法令の文言では言語および数字が中心となり理解が難しいので、図や表により直観的に理解しやすい解説を掲載します。
解説項目は、耐震基準適合証明書を使う住宅税制の種類(住宅ローン減税、贈与税の非課税、登録免許税の軽減、不動産取得税の減額等)、中古住宅取得時の特例、根拠法令、経過年数基準、証明書の提出先と提出時期の解説であり、また減税効果を試算しています。必要枚数の算出資料として活用できます。なお所有権が共有となっている物件の場合は必要枚数がさらに多くなる場合がありますので税務署等に確認が必要です。

住宅取得時の税制特例制度の種類と根拠法令

(住宅ローン減税)

住宅借入金等を有する場合の
所得税額の特別控除
租特法第41条
租特令第26条

(居住用財産の買換特例)

特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例 租特法第36条の2
租特令第24条の2
特定の居住用財産を交換した場合の長期譲渡所得の課税の特例 租特法第36条の5
租特令第24条の2

(住宅取得等資金の贈与税の非課税措置)

直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税 租特法第70条の2
租特令第40条の4の2
特定の贈与者から住宅取得等
資金の贈与を受けた場合の
相続時精算課税の特例
租特法第70条の3
租特令第40条の5

(登録免許税の税率の軽減措置)

住宅用家屋の所有権の
移転登記の税率の軽減
租特法第73条
租特令第42条
住宅取得資金の貸付け等に係る
抵当権の設定登記の税率の軽減
租特法第75条
租特令第42条の2の3

(不動産取得税の減額措置)

既存住宅に係る不動産取得税の
課税標準の特例措置
地方税法第73条の14
地方税法施行令第37条の18
既存住宅の用に供する土地に係る
不動産取得税の減額措置
地方税法第73条の24
地方税法施行令第37条の18

租特法:租税特別措置法  租特令:租税特別措置法施行令

●不動産取得税の減額措置を受けるためには、不動産取得申告を行う必要があります。申告の期限は都道府県により異なっていますので、各都道府県税事務所にご確認ください。

耐震基準適合証明書が必要となる経過年数基準等

経過年数基準の説明図

○木造や軽量鉄骨造等の中古住宅の場合、新築日が取得日から20年を超えているものは、住宅ローン減税等の税制特例措置を受けるために、耐震基準適合証明書が必要になります。

○鉄筋コンクリート造や鉄骨造(重量鉄骨造)等の中古住宅(マンション含む)の場合、新築日が取得日から25年を超えているものが、税制特例措置を受けるために、耐震基準適合証明書が必要になります。

●取得日は、売買契約日ではなく、所有権の移転がなされた日(一般に引渡日)となります。

不動産取得税の経過年数基準の説明図

●不動産取得税(都道府県税)の減額措置については、耐震基準適合証明書が必要になるのは、新築日が昭和56年12月31日以前の物件となります。

耐震基準適合証明書の提出先と提出時期

優遇税制別の提出窓口
優遇税制
(税制特例)
耐震基準適合
証明書提出先
耐震基準適合
証明書提出時期
住宅ローン減税
または
居住用財産の買換特例
税務署 所得税の確定申告時
住宅取得等資金の
贈与税の非課税措置
税務署 贈与税の申告時
登録免許税の
税率の軽減措置
市区町村役場 住宅用家屋証明書
の取得時
(引渡し後・登記前)
不動産取得税の
減額措置
都道府県税事務所等
(市町村役場経由
の場合あり)
不動産取得申告時
(例:大阪府の場合は
取得日から20日以内)

○登録免許税の税率の軽減措置は、2段階の手続きになっています。1段階目として、市区町村役場にて住宅用家屋証明書を取得します。耐震基準適合証明書は、この手続きの添付書類となります。2段階目として、登記所にて住宅用家屋証明書を提出することにより、優遇税制の措置が受けられます。

○住宅ローン減税において、耐震基準適合証明書が必要になるのは初年度のみです。2年度目以降の確定申告等では必要ありません。

○住宅ローン減税では所得税(国税)のほか、個人住民税(地方税)にも適用される場合がありますが、耐震基準適合証明書が必要となるのは所得税の確定申告時のみです。

○不動産取得申告の時期については、都道府県により異なります。納税先となる各都道府県税事務所等にてご確認ください。

●所得税および贈与税の両方で税制特例を受ける場合や夫婦共有名義・連帯債務またはペアローンで税制特例を受ける場合など、申告書が複数になる場合に必要となる耐震基準適合証明書(原本)の数については、管轄税務署または税理士の方にご相談ください。

耐震基準適合証明書による減税効果

住宅ローン残高による違い(住宅ローン減税)
住宅ローン
年末残高
課税所得額 単年度減税額
(所得税+住民税)
3,000万円 300万円 200,000円
2,000万円 300万円 200,000円
1,000万円 300万円 100,000円

※課税所得額については、所得税と住民税の場合では異なることがありますが、上表では便宜上等しいものと仮定しています。

○住宅ローン減税による減税額は、住宅ローン残高によって変化しますので、元金の返済が進むと減税額が小さくなる場合があります。

※個別の減税額については、管轄税務署または税理士の方にご相談ください。

課税所得額による違い(住宅ローン減税)
課税所得額 住宅ローン
年末残高
単年度減税額
(所得税+住民税)
500万円 2,000万円 200,000円
300万円 2,000万円 200,000円
100万円 2,000万円 100,000円

※課税所得額については、所得税と住民税の場合では異なることがありますが、上表では便宜上等しいものと仮定しています。

○住宅ローン減税による減税額は、減税前の税額が限度額ですので、所得が少なくなると減税額が小さくなる場合があります。

※個別の減税額については、管轄税務署または税理士の方にご相談ください。

固定資産税評価額による違い(所有権移転登記)
建物の固定資産
税評価額
登録免許税額
(特例なし)
税率:20/1000
登録免許税額
(特例あり)
税率:3/1000
特例による差額
800万円 160,000円 24,000円 136,000円
400万円 80,000円 12,000円 68,000円

○所有権移転登記における登録免許税の特例は、建物の登記にのみ適用されます。土地の登記については、耐震基準適合証明書による税制優遇措置はありません。

債権金額による違い(抵当権設定登記)
債権金額
(住宅ローン)
登録免許税額
(特例なし)
税率:4/1000
登録免許税額
(特例あり)
税率:1/1000
特例による差額
3,000万円 120,000円 30,000円 90,000円
2,000万円 80,000円 20,000円 60,000円

●登録免許税額は、建物の固定資産税評価額や債権金額(住宅ローン)により異なります。また、住宅用家屋証明書の取得については、一般に登記業務の一環として行われ、取得手数料が必要になります。個別の税額や手数料等については、司法書士の方にご相談ください。

●耐震基準適合証明書により優遇税制を適用した場合の減税効果は、個別の条件により異なります。耐震基準適合証明書の取得には費用を要するため、必ずしも有利になるとは限りません。また、現地調査等により耐震基準への適合が証明出来ない場合もあり、減税等のメリットを享受出来ない可能性もありますので、証明書の要否および必要枚数は、得失を比較して十分にご検討ください。

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耐震基準適合証明書の発行には想定以上の時間を要することが多いので、売買契約や売出しに先行して調査を行うことをお奨めします。

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