【図解・表説】ローン減税耐震基準−新耐震設計基準入門(1)−

新耐震設計基準と旧耐震設計基準の共通点


建物の粘りで持ちこたえる大地震時の耐震性能

新耐震設計基準は1981年(S56年)の建築基準法施行令の改正により導入され、耐震設計が稀に発生する中地震に対する一次設計と極めて稀に発生する大地震に対する二次設計に区分されました。大地震に対する耐震設計はこの時に初めて明確に位置づけられましたが、このことが直ちに旧耐震設計基準による建物が大地震に耐えられないことを示すものではありません。いずれの基準も大地震時には建物の粘り(靱性)により持ちこたえさせるという基本は同じものとなっています。


地震時の建物の状態・・・弾性変形と塑性変形

地震が起きると、地盤の揺れにより建物も揺れて変形しますが、揺れが収まった後の状態の違いにより、弾性変形と塑性変形に分けられます。


弾性変形

弾性変形とは、揺れている間は変形するけれども、揺れが収まった後は元の形に復元するような変形状態をいいます。ゴムを指で伸ばしても指を離すと元に戻るのと同じ現象であり、建物がゴムのように変形するというのはイメージしにくいかも知れませんが、巨視的には同様のものとして扱うことができます。

弾性変形している部材に生じる力は、部材の変形量と比例関係にあります。これをフックの法則と呼びますが、グラフで表すと直線になり、小学校の時に行ったバネばかりの実験でお馴染みのものです。



塑性変形

塑性変形とは、揺れが収まった後も元の形に戻らずに変形が残留してしまう状態をいいます。いわゆる伸びきったゴムと同じ現象であり、建物の場合は床や壁の傾きとして現れることが多くなっています。

塑性変形している部材に生じる力は、部材の変形量との比例関係が成立せず、グラフでは曲線になってしまいます。この曲線も放物線などとは違って関数関係をもつものでもありません。


塑性変形が建物に粘りを生み出す

塑性変形は、耐震設計において防ごうとする倒壊状態ではありません。元に戻らない現象ですがあるため、一般的感覚では「建物が壊れた」状態であると認識されますが、人命に明らかな危険が生じるような倒壊状態には至っていない場合が大半です。むしろ、塑性変形状態は地震に対するクッションとして機能し、また倒壊に至るまでの猶予を与える『粘り』として有効な存在です。


エネルギー

建物が揺れを受けると、変形することにより地震のエネルギーを吸収します。このとき、建物が弾性変形できるだけの強度を持っていれば、地震後は元に戻り壊れません(注:あくまで骨格レベルの話です)。耐震設計の一次設計では、震度5相当の中地震による揺れに対して、建物が弾性変形できる強度となるようにして、地震後も速やかに使用が出来ることを目的としています。

弾性変形を超えるような強い揺れを受けて塑性変形状態となっても、建物は地震のエネルギーを吸収することができます。エネルギーの吸収は建物が倒壊するまでなされ、つまり地震のエネルギー吸収できるだけの変形能力(粘り)をもっていれば建物は倒壊しないことになります。この変形能力を靱性ともいいます。

震度6〜7相当の大地震に対する耐震設計では、建物のもつ粘り(靱性)を利用して倒壊を防ぎ、人命を守ることを目的としています。


粘りによる大地震時の耐震が新基準・旧基準共通の基本

大地震時には建物のもつ粘り(靱性)を利用して倒壊を防ぐという基本的な考え方は、新耐震設計基準でもそれ以前の基準でも同じです。大きく違っているのはその適用の仕方にあります。


新耐震・旧耐震

中地震レベルの揺れに対しては、建物ごとに構造計算を行って、地震時に建物にかかる力が許容範囲以内であるかの確認を行っています。これが旧耐震設計基準においても用いられていたのは、弾性変形の場合の構造計算はコンピューターがなくとも可能であったためです。

しかし、大地震レベルの揺れで考慮する塑性変形については、その構造計算はコンピューターがなければ困難でした。そのため旧耐震設計基準では、建物ごとに大地震時の個別の構造計算をして安全性を確認することは行っていません。

ただし、建物ごとの構造計算を中地震レベルで行っておけば大地震に対して倒壊することは稀であるという経験則の下で、実際の大地震の被害の調査結果をもとにして、建物の粘り強さを補強するような構造仕様を各部に定めています。すなわち、大地震時の耐震設計については、各建物に一律な基準を加えることにより旧耐震設計法でも対応をしていた訳です。

新耐震設計基準では、コンピューターの普及に伴って、大地震時においても個別の構造計算による確認を取り入れるものとしています。



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