【図解・表説】ローン減税耐震基準−新耐震設計基準入門(2)−

新耐震設計法の特長


建物ごとの粘りに着目した大地震時の耐震設計

大地震時の揺れに対しては建物の粘り(靱性)により抵抗するのが耐震設計の基本です。新耐震設計法においては、この粘りをいかに考慮するかという点において旧耐震設計法との違いがあります。


粘りを考慮した構造計算による耐震性能の確認


新耐震・旧耐震

建物に粘りが生じるような変形状態(塑性変形)での構造計算は複雑で多量の計算となるため、一般的な建築物にて建物ごとに計算することはかつては困難でしたが、コンピューターの発達に伴って可能となりました。これにより新耐震設計基準では、大地震時の安全性を建物ごとに構造計算にて確認するものとなっています。


粘りの大きさによる耐震性能の違い

建物の強度が同程度であっても、粘りの大きさが同じとは限りません。粘りの大きさが違えば、大地震時の耐震性能にも違いが出てきます。


靱性大

地震時に建物の変形が元の状態に戻れなくなる弾性限界を超えても、すぐに形が崩壊せず、徐々に形を変えながら倒壊まで持ちこたえていく性質を粘り(靱性)といいます。

建物の粘りが大きい場合、建物の変形能力も大きくなり、吸収できるエネルギーの量が大きくなります。すなわち、中地震レベルの揺れに対する強度が変わらなくても、建物の粘りが大きくなるほど大地震時に倒壊する可能性が低くなります。大地震に対しては、建物の粘り(靱性)を大きくして倒壊を防ぐことが耐震設計の基本となっています。


靱性小

建物の粘りが小さい場合、弾性限界を超えるとすぐに部材が降伏して形が崩壊し、一気に倒壊が生じることがあります。このような壊れ方を脆性破壊といい、人命保護の点では極めて危険な現象であるため、これを避けることが耐震設計の大きな目的となっています。


粘りが小さい場合の耐震設計

建物の粘りと聞いたとき、ほとんどの人は建物の材料をイメージして、鉄は粘りが大きくコンクリートは粘りが小さいと考えます。確かに材料としてはそのとおりですが、建物全体の粘りについては、実は建物の形状によって大きく左右されています。


靱性小の例

大地震での倒壊の典型例として、ピロティの崩壊があります。1階が駐車場のために柱だけにしたピロティと呼ばれる形式の建物にて、1階が変形しやすいために地震のエネルギーが集中して層崩壊を起こすものです。

各階ごとの建物の変形しにくさを見たときの指標に剛性率があり、ピロティのように一部に変形しやすい階があれば剛性率は小さくなります。剛性率の小さい建物は粘りが小さい建物となります。

剛性率が上下方向のバランスをみる指標であるのに対して、水平方向の変形しにくさのバランスをみる指標として偏心率があります。偏心率が大きい建物は粘りが小さく、大地震の際の被害が大きくなりがちです。耐力壁の配置に偏りがある建物に多いほか、セットバックにより建物の高さが部分的に変わっていて直上の重量にバラつきが生じるような建物もよくみられます。



強度割り増し

粘りが小さい建物に対しては、粘りが大きいものに変えることが耐震設計の基本となります。鉄筋コンクリート部材の配筋量を増やすような部材耐力の変更が中心となりますが、場合によっては間取りやレイアウト等の平面計画の見直しを必要とすることもあります。

粘りの改良が十分にできない場合は、建物の強度を割増す必要があります。強度を大きくして弾性限界を上げ、塑性変形までの余裕を大きく取ります。地震により受けるエネルギーは弾性変形により吸収することになります。


靱性抵抗型と強度抵抗型

大地震に対する抵抗方法は、建物の粘りにより持ちこたえる靱性抵抗型と強度による強度抵抗型に分かれます。


靱性型・強度型

靱性抵抗型は、大地震時の耐震設計の基本となります。特に高層建築物では、強度を上げると重量が増加してさらに強度が必要になるスパイラルによるコスト増加を抑えることが出来るとともに、脆性破壊による被害の拡大も抑えることが出来るため重要となります。

強度抵抗型は、コストの影響が少ない低層建築物や変形性能が大きく出来ない壁式架構で採用されることが多くなります。実際には、両タイプは明確に分けることは出来ず、ほとんどの建物は両者を適宜組み合わせたものです。

なお、低層の木造建築物の多くは、構造計算を簡略化した壁量計算しか必要とされておらず、旧耐震基準よりも必要壁量を大きくして新耐震設計基準としており、強度抵抗型となっています。その後2000(H12)年の基準改正にて金物設置や偏心率等の靱性抵抗型の要素が加えられています。




耐震基準適合証明書 についてはこちら           



    1. 【図解・表説】ローン減税耐震基準−新耐震設計基準入門(2)−