マンションと一戸建ての違いから分かるフラット35適合証明書

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今回は、中古住宅のフラット35適合証明書についての基本事項をマンションと一戸建ての違いから整理しています。

フラット35は長期固定金利融資であるため、基本的な考え方は耐久性を重視していることです。このため、建物が作られた時の耐久性能と作られた後の維持管理が適合証明書の発行可能性を大きく左右します。

マンションは鉄筋コンクリート造等の耐久性が高い構造で作られ、また管理組合が定期的にメンテナンスを行うために発行可能性は高くなります。一方で一戸建ては耐久性の低い構造が多く、またメンテナンスも定期的に行われないものが多いため発行可能性は低くなります。

マンションなのにマンションとして扱われない場合がある

フラット35適合証明書には、『マンション』と『一戸建て等』の2種類があり、この区別が意外と難しくなっています。『一戸建て等』の「等」がなかなかの曲者なのです。

『マンション』と『一戸建て等』の区別は、「戸建形式」により行います。「戸建形式」とは、複数の住戸がどのように組み合わさっているかによる分類のことで、一戸建て、連続建て、重ね建て、共同建てとに分かれています。そして、3階建て以上の共同建てが『マンション』として扱われ、その他はすべて『一戸建て等』として扱われます。

戸建て形式の違いを立面図により示した図

2階建て以下の「共同建て」の集合住宅は、フラット35の戸建型式としては『一戸建て等』に分類されます。名称がマンションとなっていたり、管理組合があったり、区分所有建物で登記されていたとしても、『一戸建て等』の基準が適用されます。

共用廊下や共用階段等をもたない「連続建て」および「重ね建て」の集合住宅については、階数に関わらず『一戸建て等』に分類されます。テラスハウス型のマンションは、戸建形式は連続建てとなることがほとんどであり、その場合は『一戸建て等』となります。

『一戸建て等』に分類される建物であっても、一部の基準には『マンション』のものが適用されるものがあり、非常に複雑な規定なので注意が必要です。

[参考資料]
住宅金融支援機構フラット35HP 中古住宅の技術基準の概要

戸建形式についての詳細はこちら

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建築士が対応できる融資種別は同じ

フラット35の融資種別によっては建築士が適合証明書の発行を出来ない融資種別がありますが、発行できる融資種別にマンションと一戸建てでの違いはありません。

建築士が対応可能な融資種別の表

フラット35借換融資および財形住宅融資リ・ユースマンション(返済期間25年)については、旧耐震物件(建築確認日が昭和56年5月31日以前等)の場合にフラット35適合証明書が必要になり、いずれも建築士が対応できます。

フラット35S(エス)の金利Aプランに該当する物件または金利Bプランで優良な住宅基準のみに該当する物件は、検査機関での対応のみとなりますが、該当する物件は中古住宅においては極めて限られています。

[参考資料]
住宅金融支援機構フラット35HP フラット35】Sの技術基準の概要

フラット35S(エス)についてはこちら

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接道条件は同じ

住宅の敷地は、原則として一般の交通の用に供する道に2m以上接することとなっています。

この接道条件は、マンションと一戸建てで共通です。

[参考資料]
住宅金融支援機構フラット35HP 中古住宅の技術基準の概要

住宅金融支援機構 住宅技術基準規程 第17条(PDF)

 

対象となる物件の床面積に違いがある

一戸建て、連続建て、重ね建てでフラット35を利用するときは、住戸の床面積が70平米以上必要となります。

マンションでフラット35を利用するときは、住戸の床面積が30平米以上必要です。この要件では、2階建て以下の共同建ての住戸でも30平米以上で対象となります。

対象となる物件の床面積を示した表
一戸建て等の基準
対象となる物件の床面積を示した表
マンションの基準

財形住宅融資(リ・ユース又はリ・ユースプラス)を利用するときは、住戸の床面積が40平米以上、280平米未満であることが必要です。

店舗等との併用住宅の場合は、店舗等の非住居部分を除いた面積で算定します。

[参考資料]
住宅金融支援機構フラット35HP 中古住宅の技術基準の概要

住宅金融支援機構 住宅技術基準規程 第18条第1項(PDF)

 

対象となる物件の用途は同じ

フラット35は住宅取得に対する融資制度ですが、住宅以外の用途をもった併用住宅も対象になっています。ただし、住宅部分の床面積が非住宅部分(店舗・事務所等)の床面積以上必要となります。

対象となる物件の用途を例示した図

二世帯住宅については、非住居部分がなければ、専用住宅となります。(上図の右端参照)

財形住宅融資(リ・ユース又はリ・ユースプラス)を利用するときは、住居のみの専用住宅だけが対象となり、店舗等との併用住宅は、すべて財形住宅融資の対象から外れます。

併用住宅に適合証明書を交付した場合であっても、店舗等の非住居部分については、フラット35の融資対象になることを示すものではありません。

用途に関するこれらことは、マンションと一戸建てで共通です。

[参考資料]
住宅金融支援機構フラット35HP 中古住宅の技術基準の概要

住宅金融支援機構 住宅技術基準規程 第18条第2項(PDF)

 

旧耐震の物件に耐震診断以外の評価手法がどちらも存在する

いつから新耐震となるかを示した図

建築確認日が昭和56年6月1日以後の物件(新耐震)は、フラット35の耐震評価基準に適合したものとなります。

建築確認日が確認できない場合、新築日が昭和58年4月1日以降の物件は新耐震設計基準に適合したものとみなします。新築日は、登記事項証明書に記載されたものです。この取り扱いはフラット35およびリ・ユースに特有のものです。

旧耐震の物件については、耐震評価審査が別途に必要となります。旧耐震の物件とは、建築確認日が昭和56年5月31日以前(建築確認日が確認できないときは、新築日が昭和58年3月31日以前)のものです。

旧耐震の耐震評価審査には、耐震改修促進法に基づく耐震診断のほかに、住宅金融支援機構独自の方法があります。耐震診断よりも簡易に行うことができます。共同住宅(2階建て以下を含む)とその他(一戸建て・連続建て・重ね建て)の2種類に分かれています。

[参考資料]
住宅金融支援機構フラット35HP 中古住宅の技術基準の概要

 

建築確認日についてはこちら

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適合証明書の有効期限に違いがある

一戸建て等のフラット35適合証明書(中古住宅適合証明書)の有効期限は、現地調査日から6ヶ月間です。これには共同建てで2階建て以下の物件も含まれます。

マンション(3階建て以上の共同建て)のフラット35適合証明書の有効期限は、現地調査日から3年間です。ただし、適合証明受理日において竣工から5年以内の場合は、現地調査日から5年間となります。

フラット35または財形住宅融資の借り入れの申込みは、未入居の中古住宅の場合、竣工(新築日)後2年を超えてからに限られます。竣工後2年以内の物件の場合は留意が必要です。

新築後いつから対象になるかの条件を示した図

[参考資料]
住宅金融支援機構フラット35HP 中古住宅の物件検査の概要

 

マンションでは共用部分の調査が必要

住宅金融支援機構の技術基準への適合性の確認に必要な作業として、書類審査と現地調査とを行います。

書類審査は、建築時の書類として設計図面や建築確認済証等を対象とし、現時点の書類として登記事項証明書や管理規約等を対象とします。送付可能な書類は事前審査にて行い、マンション等で管理事務所から持ち出し不可等の送付できない書類は、現地に出張した際に審査を行います。

一戸建て等の現地調査は、屋内(室内・床下・小屋裏・バルコニー)および屋外(建物の外装・外部基礎・敷地)について行います。床下・小屋裏については、点検口から見える範囲となります。

マンションの現地調査は、専有部分および共用部分の両方に対して行いますが、専有部分についてはフラット35の検査を行う場合のみとなります。

耐震評価審査は、旧耐震の物件の場合に行うものです。書類と現地の調査をもとに、出張後に審査および判定を行います。

[参考資料]
住宅金融支援機構フラット35HP 中古住宅の物件検査の概要

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耐久性基準は一戸建てがマンションより難しい

フラット35では、住宅の耐久性確保に関する措置が設計や仕様でなされているかの確認を書類審査および現地調査にて行います(耐久性基準)。耐久性には耐火性が含まれ、耐火性の高い構造は耐久性の高い構造と評価されます。長期固定金利融資の担保性に関係するため最も重視される基準です。

耐久性の確認は主として書類審査にて行います。確認に必要な書類が保管されていない場合には、木造住宅以外は確認が出来ないために検査に不合格ということになります。マンションは管理組合によって設計図書等が残されていることが多く、また建物が鉄筋コンクリート等の耐火性能が高い構造であるため、検査に合格する可能性は高くなります。

一戸建て等の住宅の場合、建築時の書類が保管されていないことが多く、また耐火性能が低い構造が多いために、検査の合格可能性は低くなります。ただし木造の場合は、現地調査による確認が可能となっており、また実況により基準が緩和される場合もあります。

[参考資料]
住宅金融支援機構フラット35HP 中古住宅の技術基準の概要

住宅金融支援機構 住宅技術基準規程 第21条(PDF)

住宅金融支援機構 住宅技術基準実施細則 第2 証券化支援住宅技術基準2(5)(PDF)

 

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劣化状況基準も一戸建てがマンションより難しい

フラット35では、住宅が健全な状態に維持保全されているかの確認を劣化状況の現地調査にて行います(劣化状況基準)。建物の基礎、外壁、柱等に欠損等の劣化事象が存在しないかを確認します。

建物の劣化状況は、定期的に外装改修を行うなどのメンテナンスの有無に大きく左右されます。マンションで長期修繕計画に基づいて大規模改修工事を行っている場合には、検査に合格する可能性が高くなります。

一戸建て等の住宅では、定期的なメンテナンスを行っている物件が少なく、一方で検査項目はマンションに比べて多くなっているため、検査に合格する可能性は低くなります。

劣化状況の調査については、瑕疵保険に用いられるインスペクションを既に行っている場合には、その結果を活用することにより現地調査を省略できる場合があります。

[参考資料]
住宅金融支援機構フラット35HP 中古住宅の技術基準の概要

住宅金融支援機構 住宅技術基準規程 第23条第1項、第2項(PDF)

住宅金融支援機構 住宅技術基準実施細則 第2 証券化支援住宅技術基準2(7)(PDF)

 

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売主への影響がどちらもインスペクションより小さい

フラット35適合証明書を取得して直接に恩恵に預かれるのは買主ですが、逆に取得できなかったときのことを考えると、売主が影響を被ることはなるべく避けたいものです。

フラット35を目的とした単独の物件検査の結果は、住宅の売買契約時の重要事項説明の対象とはなりません。しかし、瑕疵保険の検査も兼ねる場合に行うインスペクション(建物状況調査)の結果は、マンションや一戸建てに関わらず重要事項説明の対象となります。

また、フラット35の基準とインスペクションの基準は同じものではなく、劣化状況の基準はインスペクションの方が多くなっています。例えば、一戸建て等のフラット35の劣化状況基準では、屋根が検査対象になっていません。一方、インスペクションでは屋根が検査対象となっており、フラット35の合否に関係のない項目で劣化事象が指摘される可能性があります。

マンションの場合、フラット35の劣化状況基準ではコンクリートの圧縮強度が検査対象になっておらず、またコンクリートのひび割れ(0.5mm以上)等は劣化事象として扱いません。一方、インスペクションではコンクリートの圧縮強度が検査対象になっており、またコンクリートのひび割れ(0.5mm以上)等が劣化事象として扱われ、フラット35の合否に関係のない項目で劣化事象が指摘される可能性があります。さらに圧縮強度試験は試験痕がコンクリート面に残ることもあります。

このように一戸建て等およびマンションのいずれにおいても、フラット35の適合確認のための調査としては、インスペクションを用いない方が売主への影響が小さくなります。

[参考資料]
宅地建物取引業法第35条第1項第6号の2

住宅金融支援機構 住宅技術基準実施細則 別表6・7(PDF)

国土交通省 既存住宅状況調査方法基準の解説 P5-14(PDF)

 

フラット35融資の対象物件であるかどうかの判断を後回しにして売買契約を進めることは、買主および売主の双方にとって大きなリスクとなります。売買契約や売出しに先行して判断のための調査を行うことをお奨めします。

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