専有部分は耐震に関係ないから調査不要か?

耐震基準適合証明書の調査対象範囲



(1)フラット35なら共用部分の調査だけで可能だが…  

(2)耐震基準適合証明では専有部分を除外できるのか   


フラット35なら共用部分の調査だけで可能だが…

中古住宅の売買に伴って耐震基準適合証明書を発行するためには、売主の方の協力が不可欠です。証明書の申請を行ってもらわねばなりませんし、家屋調査にも協力して頂く必要があります。

ここで一つの疑問が出てきます。マンションの場合は、専有部分も家屋調査の対象になるのかという疑問です。類似制度のフラット35適合証明書では専有部分の調査無しでも発行が可能になっているからです。もし同様に専有部分の調査が不要であれば、売主の方の負担を軽くできることになり助かるという人も多いでしょう。

みなさんご存じのように、マンションには専有部分と共用部分があります。専有部分とは、区分所有法に定めがあり、区分所有権の目的たる建物の部分をいいます。物理的には、購入する住戸の外壁や戸境壁より内側の空間になります。共用部分は専有部分以外の部分です。

専有部分や共有部分というのは所有権から見た建物の分け方です。これとは別に、建物には耐震性能から見た建物の分け方もあります。構造耐力上主要な部分というのがそれで、建築基準法施行令に定めがあり、耐震診断を規定している耐震改修促進法関係においても用いられます。

構造耐力上主要な部分の具体例を挙げると、柱、梁、壁、床版などですが、このうち地震力や積載力等を支えるもののみが該当することになります。同じ壁であっても、住戸の中の間仕切壁などは該当しません。

マンションにおける構造耐力上主要な部分は、一般に共用部分に属します。共用部分は管理組合の管理となるので、建物全体の耐震性を左右する構造耐力上主要な部分が共用部分となるのは建物の管理上合理的と言えます。

マンションのフラット35適合証明書では、共用部分の調査だけで証明書の発行が可能となっています。フラット35S(エス)の場合を除いて専有部分を調査する必要はありません。売主の方の負担を減らす意味でも合理的な制度になっています。

ここまでの話を聞いた限りでは耐震基準適合証明書においても専有部分の調査は不要であろうと誰もが思うでしょう。特にマンションでフラット35を取り扱った経験のある仲介業者さんはそのように考えがちです。ところがそれは早計なのです。



耐震基準適合証明では専有部分を除外できるのか

マンションの構造耐力上主要な部分は一般に共用部分に属することから、仮に共用部分のみを調査したとして耐震基準適合証明書を作成することはできるのでしょうか?

まずマンションが地震に対して安全な構造であるかを確かめるための耐震診断は、共用部分のみの調査にて行うのが通常ですので、技術的な判断は可能といえます。

では、このマンションに対する技術的な判断に基づいて耐震基準適合証明書を作成しようとするとどうなるのか?ここで問題になるのは証明書の書式です。

実は、耐震基準適合証明書の書式は租税特別措置法の委任を受けて定められています。租税特別措置法は、建築基準法などとは違って拡張解釈は原則として出来ず、文理解釈によって言葉の一つ一つに厳格に従わねばなりません。

耐震基準適合証明書の様式では、家屋番号を記入する欄があります。この家屋番号は登記簿に記載されているものです。マンションの場合、登記簿の家屋番号は住戸ごとに付与されており、これはすなわち専有部分を示したものです。

耐震基準適合証明書には家屋調査日も記入する欄があります。証明書に記載されている家屋が専有部分ということは、家屋調査日というのは専有部分の調査日ということになってしまいます。もし共用部分しか調査しなかった場合、証明書の調査日欄を記入できなくなるということです。

家屋番号が示すのは専有部分と共用部分の両方ではないのかと疑問を感じる人もいるかも知れませんが、専有部分と共用部分は別物であり、ただ共用部分の所有権の持ち分が専有部分の処分に従っているだけです。すなわち所有者が専有部分と共用部分の両方を持っているのであって、共用部分が専有部分に従属している訳ではないのです。

つまり調査の対象が専有部分であるので、まず専有部分の調査を行い、そして技術的な必要性から共用部分に調査の範囲を拡げるという順番になり、最初から専有部分を調査対象から外すということは出来ないのです。最初から外すためには制度設計における対応が必要になります。

フラット35適合証明書の場合は、住宅金融支援機構が出している実務手引において、専有部分を調査対象から外すことが出来る旨が明記されています。しかし、耐震基準適合証明書の場合は、財務省からも国土交通省からもそのような文書は出ていません。

また、一般的には共用部分の調査により適合証明の可否が決まってくるとは言え、専有部分の調査の有無によって適合証明の可否が変わる場合もあります。

例えば、耐力壁である戸境壁を一部撤去して二戸一にリフォームした住戸は専有部分の調査をして初めて分かる場合があります。また、住戸内の間仕切壁を防音のためにコンクリート壁に変更したものは荷重条件が変わるので適合証明の可否に影響します。

専有部分の現況が共用部分の耐震性能に悪影響を与えていないことを確認するという意味では、専有部分の調査も必要なものになります。このような調査も建築士自身が実地で行うことが証明書作成の原則であることは言うまでもありません。

専有部分は屋外に面していないので必ず屋内に立ち入る必要があり、ここの調査は売主の方に立会い等の負担をかけることともなりますが、調査対象から除外できる旨の規定が現行では存在しない以上、不可欠なものとなります。

(注)ここでは原則的な話をしております。個別事情等により取扱が変わる場合があるので、具体的な減税の可否は管轄税務署等にご確認ください。



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