同じマンションなら当日に取得できる?

同一マンションの別住戸での耐震基準適合証明



(1)同じマンションの過去の結果はあくまでも参考    

(2)家屋調査日欄の記入というハードル         

(3)申請者欄の記入というハードル           


同じマンションの過去の結果はあくまでも参考

築25年を超える中古マンションの住戸を購入しようとするとき、もし同じマンションの別の住戸において既に耐震基準適合証明書が発行されていたとしたら、自分の購入する住戸でも簡単に適合証明書が取得できるのでしょうか?

フラット35の適合証明書の場合は、同じマンションの別の住戸における適合証明書を利用することで現地調査を省略することができます。しかし耐震基準適合証明書は別制度であるので、フラット35のやりかたをそのまま適用することはできません。

耐震基準適合証明では、耐震診断の結果が証明書発行の可否を左右します。マンションの耐震診断は各住戸ごとではなく、各住戸を含んだ建物全体に対して行います。同じ建物であれば各住戸に共通した結果が得られることになります。

ただし、同じマンションだからと言って同じ建物に属するとは限りません。一つのマンションが複数の建物から構成されていることがあるからです。よくある例は、空から見た平面形状がL字型のマンションでは、L字の縦と横とが構造上別々の建物になっていて、2つの建物を繋いで一つのマンションにしているものです。こうしたものには注意が必要です。

とは言え、もし購入しようとする住戸と既に適合証明書が発行された住戸とが構造上も同じ建物であるならば、共通した耐震診断の結果が得られていると考えることは出来ます。

こうした考え方は、国土交通省が出している文書にも示されています。平成17年国住備第2号等により出された通知文がそれで、共同住宅について「過去に行われた建築士等による耐震診断又は耐震改修の結果が残存していれば、証明書の発行に当たっての参考となり得る場合がある」とされています。

しかし、別住戸の調査結果だけを用いて適合証明をしてよいとは書いていません。「参考になり得る場合がある」という限定的な表現にとどまっています。これはなぜでしょうか。



家屋調査日欄の記入というハードル

中古マンションにおいて、既に適合証明された別の住戸の調査結果をそのまま用いて購入予定の住戸の適合証明書が果たして発行できるのか。仮に前者の住戸を101号、後者の住戸を202号として試してみましょう。

耐震基準適合証明書の様式では、家屋番号の記入欄があります。これは登記簿の家屋番号になるので、202号の証明書では202号の家屋番号を記入します。同じマンションであっても、住戸が違えば適合証明書も違うものになります。

また証明書の様式には、家屋調査日の記入欄があります。ここが問題で、101号の証明の際に調査した日付を記入してもいいのかどうかという問題です。もし家屋調査というのが、202号の属する“マンション”の調査ということであれば、101号の属する“マンション”の調査と同じと言ってよいので101号の調査日を記入可能となるでしょう。

これを左右するのが、平成21年国土交通省告示第685号に書かれた次の規定です。「定める期間内に当該証明のための家屋の調査が終了したもの」とあり、202号という家屋の証明のための調査が終了した日付を記入せねばなりません。しかし、101号という家屋の証明のための調査しか行っていないので、調査日の記入ができなくなります。つまり家屋とは“住戸”のことであり、同じマンションでも目的となる家屋が違うので、そのままでは使えないのです。

この問題を乗り越えるためには、101号の調査により得られたマンションの耐震診断の結果を202号の証明に使ってもよいかという確認をするための調査を行えばよいことになります。101号と202号は同じマンションなので共通している部分はあるのですが、別の住戸なので共通していない部分もあります。共通していない部分の調査をしなければ最終的な判断ができないということです。

共通していない部分というのは各住戸の中の空間で、専有部分と呼ばれます。共通している部分は共用部分と呼ばれ、骨格となる柱や梁、戸境壁などが該当します。耐震診断は一般に共用部分の調査のみで行われます。このため、専有部分は無関係であり調査は不要と考えがちになります。しかし耐震基準適合証明書の家屋調査は、耐震診断とイコールではありません。

202号の調査を終了するためには、202号の専有部分を実地調査する必要があります。例えば、もし202号が元々は2戸の住戸であったもので、耐力壁の戸境壁を取り壊して二戸一に改造していたのであれば、101号の耐震診断結果はそのままでは使えません。あるいは防音のためにコンクリートの間仕切壁を専有部分に増設して過大な荷重となっていたりしても101号の結果が活用できなくなります。

このように、建築士が202号の専有部分の調査を行って初めて技術的判断の材料が揃うことになり、202号の家屋調査が終了できることになります。もし専有部分の調査によって、101号の調査結果を202号でも適用してもよいという確認が出来たならば、無事に202号の耐震基準適合証明書の家屋調査日を記入することが出来る訳です。

さて、こうして家屋調査日を記入できたとしても、まだ適合証明書は完成しません。もう一つのハードルがあります。



申請者欄の記入というハードル

耐震基準適合証明書の書式には、家屋調査日と家屋番号のほかに、申請者を記入する欄があります。フラット35適合証明書には申請者欄はありません。またフラット35では誰でも申請できるのに対して、耐震基準適合証明書ではその時の所有者が申請者となります。これは住宅減税を受ける要件と強く関係します。

住宅ローン控除や登録免許税減税は、住宅の取得に着目した減税です。築20年(又は25年)超の住宅の場合、耐震基準に適合した住宅を取得することが減税の要件とされていますが、これにはさらに具体的な条件が加わっています。

具体的な条件は、減税について定めた法令である租税特別措置法施行規則第18条の21第2項に書かれています。そこには対象となる住宅について「定める書類により証明がされたもの」との文言があります。すなわち耐震基準適合証明書により証明がされた家屋であることが減税の要件になるということです。

つまり、「耐震基準に適合していること」が要件なのではなく、「耐震基準適合証明書で証明されたこと」が要件ということです。一見同じように思えますが、引き渡し時点での証明書の存在を必要とするかどうかという点で大きく違っています。

この条文から耐震基準適合証明書と家屋とが一体になって買主の方に引き渡されるものであることが分かりますから、耐震基準適合証明書と家屋の所有者が同一、つまり売主の方ということになります。そして適合証明書は申請者に対して交付されるものですから、売主の方が申請者でなければなりません。

前ページの例を使うと、101号と202号で所有者が異なれば、当然に申請者は異なります。仮に所有者が同一人物であったとしても、101号の証明申請と202号の証明申請は別物なので、202号の申請を行ってもらわねばなりません。

順番を整理しますと、202号の所有者すなわち売主の方に耐震基準適合証明の申請を行ってもらって、202号の専有部分の調査を行い、そして共用部分は101号の適合証明での調査結果を用いて、最終的に202号の適合証明書を作成することになります。

順調にいけば依頼された当日に証明書を交付することが出来るかも知れませんが、かなり条件に恵まれないと難しいです。また調査報告書(証明理由書)の作成までは到底手が回りそうにはないですね。最短日数での発行にはなりそうですが…。

同じマンションの別住戸でのフラット35ならば適合証明書の即日発行は難しくないのですが、これは住宅購入についての融資業務の実態に合わせて住宅金融支援機構が柔軟に制度を定めているからです。このため耐震診断も行う必要がないように別の手法を準備しています。

一方の耐震基準適合証明書は、税に関することなので法令の制約が大きいですし、制度の中に耐震診断が組み込まれていることも大きな制約です。同じ適合証明書という名であっても、フラット35とは違いがあるのは当然と言えます。

(注)ここでは原則的な話をしております。個別事情等により取扱が変わる場合があるので、具体的な減税の可否は管轄税務署等にご確認ください。



※引渡日が築後20年(又は25年)超の方へ↓↓↓

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